クリッパーズは2021年のドラフトにおいて1巡目の25位指名権を持つだけでしたが、今年もトレードを駆使し、なんと3人も指名しました。
詳細は次の通り
①25位指名権+2024年2巡目指名権でニックスから21位指名権獲得
21位でKeonJohnsonを指名
②2026年2巡目指名権(デトロイト)+現金でマジックから33位指名権獲得
33位でJasonPrestonを指名
③2巡目指名権(Top55プロテクト、詳細不明)+現金でペリカンズから51位指名権獲得
51位で”BJ”BrandonBostonJr.を指名
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先日紹介していた注目1巡目下位指名選手は指名されませんでしたが、なぜかサンダーの指名(マンとJRE)を的中させてしまうという謎現象が起きました…。
指名された結果を振り返るとクリッパーズの今年のドラフト方針は次の2点だったのかなと思います。
①コアとなる選手の発掘
②プレイメイカーの確保
内訳としては、①の指名はKeonJohnsonと “BJ”BrandonBostonJr. 、②の指名は JasonPrestonです。
詳細は後述しますが①の2人は共にスタッツはあまりよくなく即戦力ではない代わりに、共に19歳と若くポテンシャルの高い選手です。クリッパーズのフロントは即戦力のローテーションプレイヤーを獲得する路線ではなく、時間をかけて育てる代わりにスター選手に化ける可能性に賭ける路線を選んだようです。今年はレナードが全休する可能性もあるのでレナードとポジションのかぶる2人を出せる環境も整っています。
②のプレストンはパスの得意なポイントガードで、長らくクリッパーズが探していたタイプの選手です。昨シーズンも同タイプの選手の獲得を市場で模索しましたが、あまり市場に逸材がおらず、結局ルーウィリアムズとトレードでロンドを獲得しました。ただロンドもプレイオフではいまいちだったのでプレイメイカーの確保は課題だったはずです。この課題の解消に向けて、ガードが豊富な今回のドラフトで補う戦略をとったようです。
それでは指名された選手について紹介していきましょう。
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・キーオンジョンソンってどんな選手?
キーオンジョンソンは、テネシー出身のSF/SGで地元テネシー大学に進学しました。高校時代はテネシー州で最も優れた選手に送られるテネシーMr.BasketBallに2年連続で選出されています。また、大学ではSEC(Southeastern Conference)All-Freshman team に選ばれています。
彼の魅力は何といっても運動能力の高さだと言われています。彼の爆発力は豪快なダンクやブロックなど攻守両面で存分に発揮されています。ディフェンスマインドが高く、その運動能力の高さは現時点ではディフェンスの方で多く表れている印象です。これは彼がモデルとしている選手がクワイレナードであることからディフェンスに重きを置いていることが理解できます。
ドラフトコンバインではジャンプ力の計測で121.92cmを飛び、これまでの最高記録である115.57cmを20年ぶりに更新しています。
https://twitter.com/NBADraft/status/1407904741447897088
また、パサーとしての片鱗もシーズン後半からは見せ始めていて、セカンドボールハンドラーとしての役割も期待です。ミドルシュートも得意でまさにレナードですね。
一方で、大学でのスタッツは、平均25.5分の出場で11.3得点3.5リバウンド2.5アシスト、3P27.1%と平凡です。多くのドラフト予想サイトで当初は上位指名予想が多かった(ESPNも一週間前は8位予想)ですが、上位指名チームとしてはリスクが大きいと感じたようです。
しかし直近のケースで、同じSGのポジションで運動能力の高さを買われた選手としてはドノバンミッチェルがいますが、彼の大学1年目のスタッツは7.4得点3.4リバウンド1.7アシストとジョンソンより低いのです。
運動能力と同様、爆発的な成長力を見せてもらえることを期待しています。
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・ジェイソンプレストンってどんな選手?
ジェイソンプレストン はフロリダ州出身のPGでオハイオ大学に3年間在籍し、現在22歳です。大学時代は1年目にMAC(MidAmerican Conference) All-Freshman teamに選出され、2年目にはAll MAC Second team、3年目は All MAC First team とトーナメントMVPに選出されています。
ローレンスフランク社長をして、今回のドラフトで彼より優秀なパサーは6位指名のギデーしかいないと言わしめています。下の動画のパスの映像集を見れば、彼がいかに優れたハンドラー及びパサーであることはわかるでしょう。
大学最終年のスタッツは15.7得点7.3リバウンド7.3アシスト、3P39.0%と優秀な成績を残しています。アシストはもちろんですがPGで7.3リバウンドは優秀です。6.4フィートの身長と6.85フィートのウィングスパンを上手に利用していることがうかがえます。
また、プレストンのこれまでの経歴も特筆すべきものがあります。
高校時代は6フィートしかなく平均得点も2得点と無名。普通にジャーナリズムを専攻する普通の学生になる予定でしたが、友人に誘われトーナメントに出場していると下位のDivision1の大学や Division2の大学から注目されますが、奨学金を提供されることはありませんでした。注目されたことに自信をつけたプレストンはテネシーのプレップスクールに行きます。そこは6チームで構成されていてプレストンは一番下のチームからスタートしました。しかし苦労しながらその年の終わりにはトップチームに加入することに成功します。その後、自分の紹介ビデオがないと気づいたプレストンは自分でハイライトリールを作成し、プレップスクールのTwitterに投稿したところ、オハイオ大学の目に留まり入学することになるというエリートコースからは離れた経歴です。
<参考記事:https://www.ocregister.com/2021/07/30/clippers-eager-to-bet-on-ohios-jason-preston/>
この彼のUnderdogなストーリーはクリッパーズにフィットしそうです。特にビバリーは大好きでしょう。ビバリー塾に入門することは間違いないでしょうし、もう一つのロンド塾は彼を一段上のプレイメイカーに成長させるはずです。
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・BJブランドンボストンってどんな選手?
Twitterで今回のドラフトをレポートした時に一番反響の大きかったBJボストン。
ボストンはジョージア州出身で高校はカリフォルニア州のシエラキャニオンに進学します。高校時代の活躍はすさまじく、高校のオールスターであるMcDonald’s All-AmericanとJordanBrandClassicに選出されています。当然その評価は高く、ESPNは彼は今回のドラフトで3位指名されるだろうと予想しています。なお、シエラキャニオンではレブロンの息子ブロニ―とウェイドの息子ザイアとプレーしています。

しかし、進学したケンタッキー大学では一転して評価を落とします。彼の細い体は大学のディフェンダーに当たり負けしてしまいました。これを避けるためにスクープショットやダブルクラッチを多用しますがこれも決まらない。3p%も30%とアウトサイドも決まらない。大学最後の試合は23分出場したにもかかわらず4本中0本の無得点でその大学キャリアを終えます。結局、平均30分の出場で11.5得点、4.5リバウンド、1.6アシストと平凡なスタッツで終えました。
彼にとっては更に悲劇が起こります。今年の4月22日、ケンタッキー大学のチームメイトでおなじくドラフト選出されるはずだったテレンスクラークとワークアウトの帰りに、車の事故に巻き込まれます。後部座席にいたボストンは無事でしたが運転していたクラークは帰らぬ人となりました。これからドラフト前のワークアウトが始まる大事な時期ですが、彼の精神状態は穏やかではなかったはずです。
1年前はTOP指名確実でドラフト会場に招待され華やかなドラフトを迎えることを予想していたでしょう。それが、大学で評価を大きく落とし、大方のドラフト予想もドラフト30位前半まで落ちていました。そして、当日に至っては50位になっても指名されません。ようやく51位で指名された時の映像を見ると涙なしには見られません。一瞬で応援したい選手になりました。
Very special moment of BJ Boston getting drafted to the Clippers. The raw emotion of someone knowing their life will change forever, and dreams are beginning. pic.twitter.com/BKO7hmTk1P
— Cinnabod Esnaashari (@Farbod_E) July 31, 2021
手足が長く、元々ハンドリングとシュートは上手い選手なので、体さえできれば大きなポテンシャルを秘めています。下の映像が1年前でサグスやホムグレン(来年のTOP指名)と対戦していますが、充分に渡り合っているように見えますので、実は超掘出し物になるかもしれません。
いかがだったでしょうか。こうやって書いてみると2巡目の選手の方がドラマがありますね。
ローレンスフランク社長は次のように語っていますが、その言葉通りの指名と言えるかもしれません。
“我々が採用するのは、プレイヤーという以前に、人間です。もちろん、彼らは優秀でなければなりませんが、それは人間のことであり、言葉は悪いですが、NBAでのキャリアを持つべき人間に賭けているのです。”